各務原市と県農政課が協力し提出された計画案です。
1 0 . 1 森林整備計画
( 1 )整備タイプの基準
1 )荒廃森林整備A
アカマツ林、スギ林及びヒノキ林においてみられる松くい虫被害林分及び倒伏木等発生林分に対して計画する整備タイプ「荒廃森林整備A
」の工種「被害木伐倒・整理」「簡易筋工・簡易伏工」の施工にあたっての基準は、次のとおりとする.
【被害木伐倒・整理】
伐倒・整理の対象とする被害木は、次の状態のものとする・
�立枯木
�倒伏木
�折損木
なお、倒伏木に増、傾いて立ち回復の見込みのないもの、地面に倒れ込み下層植生の生育の支障となるものを含む.
伐倒作業はチェーンソーによる全幹伐倒とし、伐倒作業後の整理作業として玉切り(長さ2m
)及び枝粂片付けを行う. されらの作業後に発生する玉切り材及び枝条は、適宜、簡易筋工・簡易伏工の材料とする・
【簡易筋工・簡易伏工】
簡易筋工・簡易伏工の目的は、植生の自然回復力の基盤形成である・アカマツその他広葉樹の天然下種更新を促進するため、簡易筋工は斜面上に小幅ながら緩勾配のステップを形成させ、樹木種子の滞留・定着、発芽・生育を期待するものであり、簡易伏工は斜面上の表土の流下防止と保湿により樹木の滞留・定着、発芽・生育を期待するものである・
簡易筋工・簡易伏工の材料は、被害木伐倒・整理の作業により発生する玉切り材及び枝条を有効に利用する.ただし、杭材料については、現地の地質、土壌条件から考えて、木杭による施工は多くの場合困難であるため、鉄筋を導入することが考えられる・しかし、この場合、施工後の経年変化により、木材が腐朽し、鉄筋が突出して、人の林内入り込み・歩行に危険となる.比較的緩傾斜の箇所では、玉切り材を教本かすがいで相互に連結し、これらの広がりと重量によってその場に留まらせることが可能であろう.
図1 0 . 1・1 にこのような方法による簡易筋工・簡易伏工の模式図を示す.
2 )荒廃森林整備B
スギ林、ヒノキ林においてみられる過密林分に対して計画する整備タイプ「荒廃森林整備B
」の工種「本数調整伐」の施工にあたっての基準は、次のとおりとする.
【本数調整伐】
本数調整伐は、立木密度を低下させることによって林内光環境を改善し、下層植生の生育を促進して、表土流出の抑制効果を期待するとともに、森林植生を多様化させて、災害に強い林分を形成させる目的で行うものである.
収量比数0.8 以下または立木密度が齢級に応じて適正となるように本数調整伐を行う.
立木密度の目安として、5 齢級において2,000 〜2,500 本/ha 、7 齢級において1,500
〜2,000本/ha 、9 齢級において1,000 本/ha 前後となるように誘導する.
3 )景親保全整備
アカマツ林においてみられる松くい虫被害林分及び倒伏木等発生林分及びこれらに準ずる周辺林分に対して計画する整備タイプ「景観保全整備」の工種「被害木伐倒・整理」「簡易筋工・簡易伏工」及び「広葉樹苗植栽」の施工にあたっての基準は、次のとおりとする・
【被害木伐倒・整理】
荒廃森林整備A における被害木伐倒・整理に準ずる.
【簡易筋工・簡易伏工】
荒廃森林整備A における簡易筋工・簡易伏工に準ずる.
【広葉樹苗植栽】
広葉樹苗植栽は、荒廃森林の景観保全についての整備効果を高めるために行うものである。被害木伐倒・整理によって生じた小規模な無立木地に花や実、紅葉等に特色のある樹木種の苗を植栽する.植栽にあたっては、簡易筋工・簡易伏工をその植栽基盤として利用する。
植栽樹種は、現存植生に整合し、かつ景観保全整備上で効果の認められるものでなければならない.
あまり種類を多く選定すると、現存植生の状態と差異がなくなり、景観保全を目的とした植栽の積極的効果が薄れる.
したがって、ここでは、ネムノキ、アオダモ、クリの3 種に限って選定することとする。
ネムノキ、アオダモは、花の美しい樹木であり、現存するが点在しているため、景観保全の積極的効果が大きいと考えられる.また、クリは実の採取が可能で、収穫の喜びが感じられる樹種である.
なお、アオダモは野球のバットの材料として知られており、積極的に植栽されている例がある.(図1
0 . 1 . 2 参照)
( 2 ) 森林整備の計画数量
森林整備の計画数量は、整備タイプ別に表1 0 . 1 . 1 のとおりとする。
表1 0 . 1 . 1 整備タイプ別森林整備の計画数量
整備タイプ | 工種 | 数量 |
荒廃森林整備A | 被害木伐倒・整理 簡易筋工・簡易伏工 |
|
荒廃森林整備B | 本数調整伐 | |
景観保全整備 |
被害木伐倒・整理 簡易筋工・簡易伏工 広葉樹苗植栽 |
1 0 . 2 治山施設の整備計画
( 1 )山腹整備計画
荒廃等現況調査における山腹荒廃調査の結果では、古い崩壊地で現在は復旧しているとみられるものが確認されたほかは新生崩壊地は認められないが、渓岸崩壊については古い小規模な崩壊に混じって小規模な比較的新しい崩壊や、谷頭崩壊の予兆がみられた。
一方、尾根部直下の露岩地については、地震等の作用によって落石が発生することが考えられる.特に西側斜面区域では山麓部に住宅地があるので、留意すべき状況にある。
そこで、山腹整備の考え方は次のとおりとする。
1 )渓岸崩壊
小規模な比較的新しい渓岸崩壊が、�流域、�流域にみられるが、現地の状況では拡大せずに自然復旧してゆく見込みがあると認められる.そこで、その対策については渓流整備の計画を考慮し、個々の渓岸崩壊について対策はおこなわないこととする。
2 )谷頭崩壊の予兆
西側斜面区域及び南側斜面区域の一部の流域上流については、谷頭崩壊の予兆とみられるクラックや表層土の流出があることから、これらの区域については、土留工等の山腹工の対策を講じるものとする。
山腹工を計画する箇所は、�流域及び� − 7 流域の内部とする。
3 )露岩地
西側斜面区域の露岩地については、現地の状況では地震等の作用によって落石が発生した場合、山麓武の住宅地へ影響する可能性があると認められるので、緩衝帯となる露岩地直下のアカマツ林に対する森林整備を進めると同時に、落石の発生源対策として、落石予防工を計画する.落石予防工の工程は、落石の危険のある急傾斜蕗岩地の固定する固定工として、現存する植生を維持しながら施工が可能なロープネット工を採用することが望ましい。
落石予防工を計画する箇所は、� − 7 流域の内部とする。
( 2 )渓流整備計画
山地荒廃度のランク付け等を考慮して抽出した重点整備流域に対して、渓流に堆積している不安定土砂の流下防止、渓床勾配の緩和、渓床の縦横浸食の防止、山脚の固定を目的として、谷止工を計画する.
谷止工は、既設構造物の配置及び渓床の不安定土砂の分布状況を考慮した上で、支渓の合流点直下または谷出口の付近に単独的に配置する.有効高は2.5〜5.Om(全高4・0〜7・Om
)とし、構造は土石流衝撃力を考慮してコンクリートとする.構造物表面の修景のため、木製パネルを積極的に採用することが望ましい.
谷止工を計画する流域は、�流域、�流域、�流域、� 流域、� 流域、�
流域及び�流域とする.
( 3 ) 山腹整備及び渓流整備の計画数量
山腹整備及び渓流整備の計画数量は、表1 0 . 1 , 2 のとおりとする。
表1 0 . 1 . 2 山腹整備及び渓流整備の計画数量
区分 | 流域 | 施設 記号 |
エ種 | 構造 | 規模 | ||
L | H | V(A) | |||||
渓流整備 | � | T−1 | 谷止エ | コンクリート | 19 | 6 | 140 |
T−2 | 谷止エ | コンクリート | 18 | 5 | 130 | ||
� | T−3 | 谷止エ | コンクリート | 20 | 4 | 150 | |
� | T−4 | 谷止エ | コンクリート | 20 | 4 | 150 | |
T−5 | 谷止エ | コンクリート | 22 | 4 | 160 | ||
� | T−6 | 谷止エ | コンクリート | 20 | 4 | 150 | |
� | T−7 | 谷止エ | コンクリート | 18 | 4 | 120 | |
� | T−8 | 谷止エ | コンクリート | 20 | 3.5 | 130 | |
T−9 | 谷止エ | コンクリート | 18 | 4 | 120 | ||
� | T−10 | 谷止エ | コンクリート | 18 | 5 | 130 | |
T−11 | 谷止エ | コンクリート | 18 | 4 | 120 | ||
1,500 | |||||||
山腹整備 | �−3 | R−1 | 落石予防エ | ロープネット | - | - | (600) |
�−7 | R−2 | 落石予防エ | ロープネット | - | - | (4,000) | |
(4,600) | |||||||
S−1 | 山腹工 | コンクリート土留ほか | (,1700) |
1 0 . 3 管理道等の計画
( 1 ) 計画の基準
森林整備、治山施設整備にともなう管理道等については、生態系保全の観点から新たな伐採等の範囲を最小限にとどめるよう配慮するため、できるかぎり既存の歩道を改修して利用するものとする.
1 ) 路網計画
できる限り既存の歩道を改修して利用する方針から、路網計画は既存歩道に準じたものとする.特に現在の利用頻度の高い八木山登山道、西登山道、尾根道、すその道については幹線歩道として位置づける.その他、森林整備、治山施設整備にともない、できるだけ既設歩道を利用しながら幹線歩道からの支線歩道を計画する.
2 )構造
既存歩道の改修にあたっては、丸太積工等の木材利用の工種をできるだけ採用して幅員の確保、路肩の補強を行うことが望ましい.
また、路面の雨水処理のため、適宜、横断排水工を設置する.横断排水ユは丸太、石など自然物を工夫利用する・
歩道の幅員は、通行の安全確保のため、人が安全に立てる幅以上として0・80〜
1・5m とする・
また、急勾配の箇所については丸太階段工による整備が考えられるが、整備後に雨水の流下に伴い階段工の横から土が流出し、階段としての機能を損なう状態となる場合がるので、土砂の流出を防止するように、側部に石積みを併用するか、または階段工を石組みだけで整備するほうが望ましい.
なお、工事用資材の運搬については、谷筋または歩道に沿ってモノレールを設置するなど、できるだけ現存の自然環境を損なわない方法を採用するべきである・
( 2 ) 計画数量
管理道等の計画数量は、表1 0 . 1 . 3 のとおりとする・
表1 0 . 1 . 3 管理道等の計画数量
計画 | 数量(m) | 備考 |
作業歩道 | 現存の自然珠境を保全するため、できる だけ既設歩道を改修利用する. |